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研究概要(研究室ガイド)やプレスリリース・受賞・イベント情報など、マテリアルサイエンスの研究室により公開された情報の中から、興味のある情報をタグや検索機能を使って探すことができます。学生の浅井さんが第70回高分子討論会において優秀ポスター賞を受賞

学生の浅井 優作さん(博士後期課程融合科学共同専攻1年、物質化学領域、松見研究室)が第70回高分子討論会において優秀ポスター賞を受賞しました。
高分子討論会は、高分子科学に携わる研究者・技術者が研究成果の発表を行い、発表内容に関し、参加者と充実した討論およびコミュニケーションができる場を提供することを開催の基本方針としています。
優秀ポスター賞は、高分子討論会において優れたポスター発表を行った発表者を表彰するため授与されるもので、もって発表を奨励し、高分子科学ならびに同会の発展に資することを目的としています。
第70回高分子討論会は、9月6日~8日にかけてオンラインで開催されました。
■受賞年月日
令和3年9月8日
■発表題目
共役系高分子によるIrO2の電子構造制御と酸素発生反応触媒性能への効果
■研究者、著者
〇浅井優作、Rajashekar Badam、松見紀佳
■受賞対象となった研究の内容
電気化学的水分解による水素製造法はシンプルで有望な方法である。しかし、アノードにおける酸素発生反応(OER)は電気化学的水分解の律速段階であり、効率的な触媒が求められる。本研究ではIrO2の電子構造をポリチオフェン系高分子によって制御することで、先行研究と比較して電流密度10 mAcm-2における過電圧を10~70 mV低下させるOER触媒を見出すに至った。
■受賞にあたって一言
この度は、2021年度第70回高分子討論会におきまして、このような賞をいただけたことを大変光栄に思います。本研究の遂行にあたり、厳格かつ熱心にご指導を頂きました松見紀佳教授、Rajashekar Badam講師にこの場をお借りして心より御礼を申し上げます。さらに、多くのご助言をいただきました研究室の皆様にこの場をお借りして心より御礼を申し上げます。


令和3年11月4日
出典:JAIST 受賞https://txj.mg-nb.com/whatsnew/award/2021/11/04-2.html物質化学領域の長尾准教授らの論文が、英国王立化学会(RSC)刊行のCrystEngCommでHot Articlesに選出

物質化学領域の長尾 祐樹准教授、修了生のLI, Zhongpingさん(令和元年9月博士後期課程修了、長尾研究室、元日本学術振興会特別研究員)、学生のLIU, Zhaohanさん(博士前期課程2年、長尾研究室)、YAO, Yuzeさん(博士後期課程2年、長尾研究室)、HASAN, Md. Mahmudulさん(博士後期課程3年、長尾研究室)らの論文 "Intrinsic proton conduction in 2D sulfonated covalent organic frameworks through a post-synthetic strategy" が、英国王立化学会(RSC)刊行のCrystEngCommでHot Articles(レビュアによって推奨された上位10%論文)に選出されました。
■選出年月日
令和3年10月6日
■研究題目、論文タイトル等
Intrinsic proton conduction in 2D sulfonated covalent organic frameworks through a post-synthetic strategy
■研究者、著者
Yuwei Zhang, Chunzhi Li, Zhaohan Liu, Yuze Yao, Md. Mahmudul Hasan, Qianyu Liu, Jieqiong Wan, Zhongping Li*, He Li* and Yuki Nagao*(*は責任著者です)
■対象となった研究の内容
Two-dimensional covalent organic frameworks (2D COFs) have attracted much attention in proton conduction, owing to their regular pore channels and easy functionalization. However, most of the COFs required loading of proton carriers to achieve high proton conductivity. Here, we report the immobilization of flexible sulfonic acid groups on the channel walls of PyTTA-DHTA-COF (synthesized by condensation of 4,4′,4′′,4′′′-(pyrene-1,3,6,8-tetrayl)tetraaniline and 2,5-dihydroxyterephthalaldehyde) via a simple post-synthetic modification strategy. The sulfonated COF showed intrinsic proton conductivity up to 10−3 at 25 °C and 100% relative humidity (RH) and high conductivity up to 10−2 S cm−1 at 70 °C and 100% RH without the introduction of any non-covalent acid molecules or imidazole derivatives.
■選出にあたって一言
It is a great honor for us to be selected as the Hot Article at CrystEngComm. I would like to gratitude to Prof. Yuki Nagao, Dr. He Li, and all our lab members for contributions and support to this work. I also appreciate the support by JSPS. We believe that this research is a step towards achieving our research goals and inspiring us to do better in the future.
令和3年11月4日
出典:JAIST 受賞https://txj.mg-nb.com/whatsnew/award/2021/11/4-1.html物質化学領域の都准教授の論文がAccounts of Materials Research誌の表紙に採択

物質化学領域の都 英次郎准教授の論文が米国化学会(ACS)刊行のAccounts of Materials Research誌の表紙(Front cover)に採択されました。本研究成果は日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究A)の支援のもと実施されました。
■掲載誌
Acc. Mater. Res. 2021, 2, 10, 858-862
掲載日2021年9月9日
■著者
Eijiro Miyako
■論文タイトル
Convergence of Liquid Metal Biotechnologies for Our Health
■論文概要
都研究室では、高い生体適合性と優れた物理化学的特性を有するガリウム・インジウム合金からなる室温で液体の金属(液体金属)の表面化学修飾法の開拓と細胞・生体組織との相互作用に関する研究を進めています(例えば、Nature Commun. 8, 15432, (2017).、Angew. Chem. Int. Ed. 56, 13606, (2017).)。本論文では、高機能性液体金属を用いたヘルスケアデバイスならびに医薬への応用と、それらを統合したバイオテクノロジーの将来展望について述べています。
論文詳細:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/accountsmr.1c00126
表紙詳細:https://pubs.acs.org/toc/amrcda/2/10
令和3年10月26日
出典:JAIST お知らせ https://txj.mg-nb.com/whatsnew/info/2021/10/26-2.html環境・エネルギー領域の高田助教と物質化学領域の木田助教の研究課題が小笠原敏晶記念財団の研究助成に採択
公益財団法人 小笠原敏晶記念財団の研究助成「一般研究助成」に環境・エネルギー領域の高田 健司助教および物質化学領域の木田 拓充助教の研究課題が採択されました。
小笠原敏晶記念財団では、わが国の産業の発達に寄与することを目的として、理学・工学の領域において健全な発展の一助となる助成活動が行われています。一般研究助成は、高分子分野における、新素材・加工技術・新機能に関する研究開発に対して助成する制度です。
*詳しくは、小笠原敏晶記念財団ホームページをご覧ください。
- 採択期間:令和4年4月~令和5年3月
- 研究課題名:主鎖型ポリ桂皮酸ブロックポリマーのミクロ相分離構造の制御と光変形性の精密制御
- 研究概要:光エネルギーを運動エネルギーへと変換することができる光変形性材料はサスティナブルマテリアルとして注目されており、その変形挙動の制御や機能化法の確立が急務の課題となっています。本研究では、私たちが従来から研究してきた光応答性材料の開発と、有機分子触媒を利用したリビング重合技術を発展させ、ポリマーのミクロ相分離にもとづく多彩な変形挙動を有した新しい光応答材料の創出を目的としています。
- 採択にあたって一言:本研究課題を採択頂き大変嬉しく存じます。また、小笠原敏晶記念財団、および本助成の選考委員会の皆様に深く感謝申し上げます。本研究が、地球の環境・エネルギー問題に資するものになるよう邁進してまいります。また、本研究に関して多大なアドバイスをいただいた金子達雄教授はじめ、様々な知見を頂いた研究室の皆様、および研究協力者の方々にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
- 採択期間:令和4年4月~令和6年3月
- 研究課題名:重水素化プローブ分子鎖の直接観察による高分子材料の結晶化機構に与える分子量分布の影響の解明
- 研究概要:高分子材料において、分子量分布(分子鎖長分布)は材料物性を決定する最も重要な分子パラメータの一つです。我々の日常生活で多く利用されているポリエチレン(PE)は分子鎖が部分的に結晶化する結晶性高分子に分類され、分子量分布の平均値や分散度の違いで結晶度や結晶厚など結晶構造が著しく変化し、結果として材料物性に大きな違いが現れます。従来の研究においても、分子量分布の形状と結晶構造の関係についてはさまざまな報告が行われてきましたが、具体的にどの分子量成分が、どのように結晶構造の形成に影響を与えているかを理解することができませんでした。本研究では、重水素化プローブ法という技術を用いることで、特定の分子量成分の結晶化挙動を独立かつ直接に観察します。具体的には、母材として用いる分子量分布が広い軽水素化PEに対して、特定の分子量の重水素化PEを微量添加することで、特定の分子量成分のみが重水素化された試料を調製します。分光測定を用いることで軽水素化PEと重水素化PEを別々に検知することができるため、特定の分子量成分の結晶化挙動を直接観察することができ、結晶化機構に対する分子量分布の影響を解明することが期待されます。
令和3年10月26日
出典:JAIST お知らせ https://txj.mg-nb.com/whatsnew/info/2021/10/26-1.html学生のRuchikaさんが国際会議Plant Genomics 2021においてYoung Scientist Awardを受賞

学生のRuchikaさん(博士後期課程3年、生命機能工学領域、塚原研究室)が国際会議5th World Plant Genomics and Plant Science Congress(Plant Genomics 2021)においてYoung Scientist Awardを受賞しました。
Plant Genomics 2021は、「植物ゲノミクスと植物科学のビジョンを超える」をテーマとした国際会議で、令和3年9月27日から28日にかけてフランスのパリで開催されました。
Plant Genomics Congressは、世界中の学界と産業界の専門家、研究者、意思決定者のユニークで国際的な組み合わせが集まり、知識、専門知識、研究革新を交換して、世界クラスの植物ゲノミクスを構築する最高のイベントとなっています。
■受賞年月日
令和3年9月27日
■研究題目、論文タイトル等
RNA-Seq-based identification and analysis of uridine-to-cytidine RNA editing related genes in Arabidopsis thaliana
■研究者、著者
Ruchika, Toshifumi Tsukahara
■受賞対象となった研究の内容
Cytosine-to-Uridine (C-to-U) and adenine-to-inosine (A-to-I) RNA editing involves the deamination phenomenon, which is common in animals and plants; however, the amination of U-to-C is confined to the plants. In this study, the high-throughput RNA sequencing (RNA-seq) of 12-days-old Arabidopsis seedlings was performed, which enables transcriptome-wide identification of RNA editing sites to analyses differentially expressed genes (DEGs) and nucleotide base conversions. The results showed that DEGs were expressed to higher levels in 12-days-old seedlings than in 20-days-old seedlings. This was confirmed by higher higher. Fragment Per Kilobase of transcript per Million mapped reads (FPKM) values, read counts, and more up-regulated genes, in 12-days-old seedlings. Additionally, pentatricopeptide repeat (PPR) genes were also expressed at higher levels as indicated by the log2FC values. The U-to-C RNA editing are predominantly found in the untranslated region (UTR) region of the mature mRNA and affect its secondary structure. Our results suggest that U-to-C RNA editing in mature transcripts impacts plant physiology. Furthermore, we investigated the physiological role of U-to-C RNA editing in Arabidopsis by using the transcription inhibitor, Actinomycin D (ActD). Addition of ActD to the cell suspension culture of transgenic Arabidopsis generated by Agrobacterium-mediated transformation revealed that single nucleotide conversion adversely affects the secondary structure and mRNA half-life of PPR protein.
■受賞にあたって一言
It is my great honour to receive the Young Scientist Award at Plant Genomics 2021. First of all I would like to make a special mention of my supervisor Professor Toshifumi Tsukahara, for his constant support and believe on me throughout my doctoral study in Japan. I would like to thank him, who saw the capabilities in me and nurtured my passion for doing a quality research. His discussions have always added the value to my research. Special cheers to all the Tsukahara lab members, this award is definitely an effort by all of us together and will be shared equally among all of us. At the same, I would also like to take this opportunity to thank the judging committee at the conference who selected me as the candidate for this award. Finally, I would like to thanks my parents and family members for always encouraging me to continue the hard work and morally supporting throughout my good and bad times.
令和3年10月25日
出典:JAIST 受賞https://txj.mg-nb.com/whatsnew/award/2021/10/25-1.html環境・エネルギー領域の高田助教の研究課題が泉科学技術振興財団の研究助成に採択
公益財団法人 泉科学技術振興財団の研究助成に環境・エネルギー領域の高田 健司助教の研究課題が採択されました。
泉科学技術振興財団では、科学技術の振興を図り、もって社会経済の発展に寄与することを目的として、高度機能性材料及びこれに関連する科学技術の基礎研究分野における真に独自の発想に基づく新しい研究に対して助成を行っています。
*詳しくは、泉科学技術振興財団ホームページをご覧ください。
■研究者名
環境・エネルギー領域 高田 健司助教
■採択期間
令和3年10月~令和4年9月
■研究課題名
高靭性バイオポリアミドを用いた自己支持性ナノ薄膜の作製と有機ELデバイスへの応用
■研究概要
眼鏡やディスプレイパネルに用いられるアクリル樹脂やポリカーボネートなどの透明樹脂は、有機ガラスと呼ばれ、様々な材料化の研究が行われています。一方で、材料の透明性の高さと力学物性(破壊強度、弾性率、靭性)はトレードオフの関係であり、高い透明性を維持しながらも高い力学強度を発揮する材料の開発は急務の課題でした。当研究課題では、これまでに開発したバイオ由来トルキシル酸という特殊な構造を持つポリアミドが透明な非晶性高分子でありながら極めて高い靭性を示すという研究成果を発展させ、これらの薄膜化の技術の確立とそれを用いたデバイス化の検討を行うことでバイオベース発光有機ELデバイスの試作検討を目的としています。
■採択にあたって一言
本研究課題を採択頂き大変嬉しく存じます。泉科学技術振興財団、および本助成の選考委員会の皆様に深く感謝申し上げます。近年、様々なバイオ由来材料が注目されている中で当研究が採択されたことは、それだけ重要な課題であるとご判断いただけたものと存じます。また、本研究に関して多大なアドバイスをいただいた金子達雄教授はじめ、様々な知見を頂いた研究室の皆様、および研究協力者の方々にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。これを励みに研究を加速できればと思います。
令和3年10月7日
出典:JAIST お知らせ https://txj.mg-nb.com/whatsnew/info/2021/10/7-1.html応用物理学領域の村田研究室の論文がThe Journal of Physical Chemistry Letters誌の表紙に採択
応用物理学領域の江口 敬太郎助教、村田 英幸教授の論文が米国化学会(ACS)刊行のThe Journal of Physical Chemistry Letters誌の表紙(Front cover)に採択されました。
■掲載誌
J. Phys. Chem. Lett. 2021, 12, 38, 9407-9412
掲載日2021年9月23日
■著者
Keitaro Eguchi* and Hideyuki Murata*
■論文タイトル
Evolution of the Ionization Energy in Two- and Three-Dimensional Thin Films of Pentacene Grown on Silicon Oxide Surfaces
■論文概要
分子薄膜が2次元構造から3次元構造に成長するにつれて、分子薄膜のイオン化エネルギーが小さくなることが理論計算により予測されていますが、実験的には確認されていませんでした。本研究では、光電子収量分光法を用いて2次元と3次元構造におけるペンタセン薄膜のイオン化エネルギーを測定し、ペンタセンを20層積層した3次元のペンタセン薄膜では、2次元のペンタセン薄膜に比べて、イオン化エネルギーが約0.2 eV小さくなることを初めて実証しました。
論文詳細:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpclett.1c02723
表紙詳細:https://pubs.acs.org/toc/jpclcd/12/38
令和3年10月6日
出典:JAIST お知らせ https://txj.mg-nb.com/whatsnew/info/2021/10/6-1.html環境・エネルギー領域の小矢野教授がSSH指定校の福島高校でオンライン講演会を実施
9月24日(金)、環境・エネルギー領域の小矢野 幹夫教授が、文部科学省「SSH(スーパーサイエンスハイスクール)」指定校である福島市の県立福島高等学校において、SS(スーパーサイエンス)部の1学年26名を対象に、オンラインによる講演会を行いました。
文部科学省のホームページはこちら
福島高校のSSHニュースはこちら
今回の講演は、「熱電変換の物理と最先端のエネルギー変換の研究」というテーマで行われました。
導入部分では、SDGsの観点から、熱電変換の研究がエネルギー問題にどのように貢献できるかについての説明がありました。続いて、物質の両端に温度差を与えると電位差が生じる「ゼーベック効果」を利用して、熱を電気エネルギーに変換する技術について、解説が行われました。
生徒の皆さんは、熱電材料の金属組成を変えることで、より高い変換効率を目指す研究開発が盛んに行われてきたことを学ぶとともに、有毒または希少な元素を含まない、環境に優しい次世代の熱電材料の開発の重要性についても理解を深めました。
また、身の周りにある熱を"収穫(ハーベスト)"して電気エネルギーに変換する「エネルギーハーベスティング」の考え方にも触れ、エネルギーの捉え方に新たな視点を持ったようでした。
最後に、小矢野教授から生徒の皆さんに向けて、「自身の知的好奇心と向き合い、ぜひ大学院進学というキャリアプランも考えてみてほしい」とメッセージを送りました。
講演後には質疑応答が活発に行われ、生徒の皆さんからは、「講義の中で化学物質がたくさん出てきたので、化学の分野ももっと勉強してみたい」、「効率を改善する方法がいくつも研究されており、自分の研究でも一つで満足しないようにしたい」、「学者の交友関係、進路の考え方、研究への向き合い方を学ぶことができた」といった前向きな感想があり、向学心の高さがうかがえる講演会となりました。
![]() 講演を行う小矢野教授 |
![]() 受講の様子(写真:福島高校提供) |
![]() 質疑応答の様子 |
令和3年9月29日
出典:JAIST お知らせ https://txj.mg-nb.com/whatsnew/info/2021/09/29-2.html触媒ビッグデータから「触媒世界地図」を描写 ~ブラックボックス化していた触媒設計を紐解く~
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国立大学法人 北海道大学 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 国立研究開発法人 科学技術振興機構 |
触媒ビッグデータから「触媒世界地図」を描写
~ブラックボックス化していた触媒設計を紐解く~
ポイント
- 触媒の組成・実験条件の知識ネットワーク「触媒世界地図」を触媒ビッグデータから描写。
- 触媒世界地図を用いた触媒設計が可能となり、新たな活性触媒を発見。
- 大規模な科学データからの材料・触媒設計の技術基盤になることを期待。
【概要】
北海道大学 大学院理学研究院の髙橋 啓介准教授、髙橋 ローレン学術研究員らの研究グループは、北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 物質化学領域の谷池 俊明教授らと共同で、触媒ビッグデータから触媒の知識を表現した「触媒世界地図*1」を描写しました。 これまで研究グループは、多数の触媒データを高速で自動取得可能なハイスループット実験装置によりメタン酸化カップリング反応*2における触媒ビッグデータ(6万件)の構築に成功してきましたが、この規模の触媒データからどのように知識を抽出し触媒設計に結びつけるかが触媒インフォマティクス*3において大きな課題でした。 そこでメタン酸化カップリング反応におけるハイスループット実験装置により得られた触媒ビッグデータに対して、オントロジー*4(知識の関係性をネットワークとして記述)の概念を活用することにより、触媒ビックデータから元素組成・実験条件・C2収率等の関係性を描写し、触媒の世界地図を作成することに成功しました。この触媒の世界地図により各要件の関係性が明白となり、そこで得られた情報から触媒設計が実現しました。 結果、触媒の世界地図からKVEu-BaO(20%C2収率)、LiTiW-BaO(19%C2収率)、EuMgZr-BaO(19%C2収率)、MoKW-BaO(19%C2収率)等の未報告の活性触媒を設計し、実験実証することに成功しました。 本手法は触媒ビッグデータや材料ビッグデータにも適用できるため、大規模な科学データからの材料・触媒設計の技術基盤になることが期待されます。 本研究成果は、2021年9月22日(水)にChemical Science誌にてオンライン公開されました。 |
元素と収率の関係、元素と実験条件の関係等が表現された触媒世界地図
【背景】
触媒は化学反応の反応速度を速める材料であり、自動車の排気ガスの浄化からエネルギーの変換まで幅広い分野で実用化されています。これまでの触媒開発は、研究者の熟練の経験や勘で試行錯誤して開発していました。その中で、マテリアルズインフォマティクス・触媒インフォマティクスの登場により材料・触媒科学は大きな転換期を迎えています。
マテリアルズインフォマティクス・触媒インフォマティクスでは、第4の科学であるデータ科学を用い、材料・触媒データのパターンから材料・触媒設計を行います。いわば、これまでの研究者の経験や勘をデータ科学で再現することを目的としています。しかし、材料・触媒ビッグデータから知識・設計をどのように抽出するかが大きな障壁となっています。特に機械学習等のデータ科学手法では機械がどう学習したのかを説明することができず、理論的解釈による設計が難しいという問題があります。
そのため、理論に基づいた触媒設計を行う必要がありました。
【研究手法】
メタン酸化カップリング反応を対象とし、独自開発したハイスループット実験装置で得られたメタン酸化カップリング反応の触媒ビッグデータに対して、オントロジーの概念を元にデータ内の知識と関係性をネットワークとして表現しました。
【研究成果】
触媒ビックデータから触媒の世界地図を作成することに成功しました。この触媒の世界地図により元素組成・実験条件・C2収率等の関係性が明白となり、そこで得られた情報から触媒設計を行うことに成功しました。結果、触媒の世界地図からKVEu-BaO(20%C2収率)、LiTiW-BaO(19%C2収率)、EuMgZr-BaO(19%C2収率)、MoKW-BaO(19%C2収率)等の未報告の活性触媒を設計・実験実証することに成功しました。
【今後への期待】
触媒ビッグデータからどのように触媒科学の知識を取り出すかが大きな課題でしたが、オントロジーという概念を元に知識のネットワークを設計することにより、触媒ビッグデータから知識の抽出・触媒設計が可能になることを初めて提案しました。この方法は今後の触媒ビッグデータや材料ビッグデータにも適用することができるため、大規模な科学データからの知識・材料設計の技術基盤になることが期待されます。
【謝辞】
本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術」(研究総括:上田 渉)における「実験・計算・データ科学の統合によるメタン変換触媒の探索・発見と反応機構の解明・制御」(研究代表者:髙橋 啓介)の支援を受けて行われました。
【論文情報】
論文名 | Constructing Catalyst Knowledge Networks from Catalysts Big Data in Oxidative Coupling for Methane for Designing Catalysts(メタン酸化カップリング反応ビッグデータから触媒の知識ネットワークの構築と触媒設計) |
著者名 | 髙橋 ローレン1 , Thanh Nhat Nguyen2, 中野渡 淳2、藤原 綾2、谷池 俊明2、髙橋 啓介1 (1北海道大学大学院理学研究院、2北陸先端科学技術大学院大学) |
雑誌名 | Chemical Science(英国王立化学会が発行する化学ジャーナル) |
DOI | 10.1039/D1SC04390K |
公表日 | 2021年9月22日(水)(オンライン公開) |
【用語解説】
*1 触媒世界地図...触媒ビックデータから元素組成・実験条件・C2収率等の関係性をネットワークとして描写したもの。
*2 メタン酸化カップリング反応...普遍的に存在するメタンはそのままでは化学的な有用性が低く、これを触媒によって別の有用化合物へ変換することが望ましい。メタンの酸化的カップリングとは、メタンと酸素分子の反応を通してエタンやエチレンを直接合成する高難度反応である。
*3 触媒インフォマティクス...データ科学手法を用いて触媒設計・触媒解析を行う学問。
*4 オントロジー...物事をどの様に概念化したかを記述する学問。
令和3年9月24日
出典:JAIST プレスリリース https://txj.mg-nb.com/whatsnew/press/2021/09/24-1.html物質化学領域の松村教授が高分子学会三菱ケミカル賞を受賞

物質化学領域の松村 和明教授が公益社団法人高分子学会三菱ケミカル賞を受賞しました。
高分子学会は、高分子科学の基礎ならびに高性能材料などの応用分野に関する幅広い研究分野を対象とした会員数10,000を超える学術団体です。
三菱ケミカル賞は、高分子科学に基礎をおき、技術、産業に寄与する独創的かつ優れた研究業績を挙げた研究者に授与される賞です。
*参考:高分子学会三菱ケミカル賞受賞者
■受賞年月日
令和3年9月7日
■研究題目
両性電解質高分子の凍結保護効果の解明と生体材料応用
■研究内容
細胞の凍結保存技術は古くから開発されており、保護物質であるジメチルスルホキシド(DMSO)などを添加する必要がありました。松村教授らは、DMSOに比べて毒性が低く、しかも活性の高い高分子系の新規凍結保護物質を新たに見いだしました。その機序が既存の物質と異なることをNMRを用いた独自の手法で明らかとし、この機序を用いた再生医療用組織の凍結保存にも挑戦しています。さらに、和牛の受精卵や精子の凍結保護剤として産業応用もされています。また、凍結濃縮という凍結現象を用いた細胞内への物質送達手法を開発するなど、高分子化学と低温生物工学双方向の異分野融合型研究を進めています。
以上、基礎から産業応用に至るまで独創的かつ優れた研究成果であると国内外から高く評価されています。
■受賞にあたって一言
高分子学会よりこの度、三菱ケミカル賞を頂くことができ誠に光栄に思います。さらに高分子化学の発展に尽力して参ります。共同研究者や研究室の学生さんならびに研究費をご支援いただいた関係各所に厚くお礼申し上げます。


令和3年9月17日
出典:JAIST 受賞https://txj.mg-nb.com/whatsnew/award/2021/09/17-1.html高感度新型コロナウイルスの迅速簡便な検査法RICCAの開発に成功 ~高度な機器不要でPCR品質の検査を15~30分で可能に~

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国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 BioSeeds株式会社 |
高感度新型コロナウイルスの迅速簡便な検査法RICCAの開発に成功
~高度な機器不要でPCR品質の検査を15~30分で可能に~
ポイント
- 41℃でのワンポット等温RNAおよびDNA増幅反応(器具不要)
- 迅速かつ高感度(RT-PCRと同じように検出)
- シンプルで瞬時の検出(ラテラルフローストリップ)
- 非常に費用対効果が高い(テストあたりの推定コスト500円未満)
【概要】
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)とJAIST発のベンチャー企業であるBioSeeds(バイオシーズ)株式会社(石川県能美市)、および複数の研究機関からなる研究者チームは、唾液から直接、極めて微量のSARS-CoV-2を検出できる高度な等温核酸増幅法(RICCAテスト)を開発しました。この方法は、シンプルなワンポット(一つの容器だけを用いる)方式のRNAウイルスの等温核酸増幅検出法で、高度な機器や、特別な実験室・検査室を必要としません。そのため、検査室にサンプルを送る必要が無く、総測定時間15~30分で、その場で即時に検出結果を得られます。これまでに、唾液中の低コピー数のSARS-CoV-2の直接検出に成功しております。研究者チームは、その場検査や、検査設備を簡単に調達できない地域等での検査手段として、実用化を目指しています。 |
【背景・研究成果】
COVID-19の感染を食い止めるための最も効果的な方法は、症状のあるなしにかかわらず、感染の疑いのある人を特定して隔離することです。SARS-CoV-2のアルファからデルタまでの4種の懸念される変異株(VOC:variant of concern)およびイータからミューまでの5種の注目すべき変異株(VOI:variant of interest)が数カ月のうちに世界中に広まったように、新しい感染性ウイルス株が急速に出現しているため、COVID-19の迅速かつ高感度で信頼性の高い検査法の利用は、病気、さらにはパンデミックの制御に不可欠です。現在、世界的に流行しているCOVID-19では、主にRT-PCRによる検査が行われています。しかし、この検査室を必要とする方法は、サンプルの前処理が必要であることや、高価な装置(蛍光光度計付きサーマルサイクラー)が必要なことから、現場での検査は難しく、また短時間での大量検査にも課題があります。PCRに類似した分子検査を行う方法として、LAMP (Loop-mediated Isothermal Amplification) やSDA (Strand Displacement Amplification) などの様々な等温核酸増幅法が現在使用されています。しかし、これらの方法は、PCRと比較して特異性や感度が低いことが報告されています。また、これらの方法の多くは、実験室でのウイルスRNAの分離、溶解、精製、増幅など、面倒な前処理を必要とします。
この問題を解決するために、JAISTのマニッシュ ビヤニ特任教授率いるチームは、ウイルスRNAの標的配列を、特別な装置を必要とせず、現場で正確に検出できる高感度かつ超高速な方法を開発し、この検出法をRICCA(RNA Isothermal Co-assisted and Coupled Amplification)と名付けました。
現在、RICCAを使用して、既にSARS-CoV-2のアルファ株とデルタ株の2つの変異株を検出しており、他の変異株にも適応可能と考えられます。RICCAアッセイに必要なものは、ヒートブロック(恒温槽)と、25種類の試薬を含む混合液があらかじめ入ったチューブだけであり、RNA特異的増幅とDNA特異的増幅を同時に行うことができます。RICCAのコストは現在のRT-PCR法等と比較しても安価であり、より広範囲な用途に適用可能と考えられます。したがって、RICCAにより、COVID-19分子診断の「ラボフリー、ラボクオリティー」のメガテストプラットフォーム(医療検査室レベルの集団検診に向けた基本的な方法)も実現できる可能性があります。また、将来的には、このプラットフォームを使って他の感染性ウイルスを検査することも可能です。
RICCAは、COVID-19の検査に必要な設備を簡単に調達できない発展途上国では特に有用です。ビヤニ特任教授のチームは、その場検査や、検査設備を簡単に調達できない地域等での検査手段として、実用化を目指しています。また、RICCAのロボット化およびモバイルプラットフォームの設計を行っています(卓上プロトタイプはBioSeeds株式会社で開発中)。このプラットフォームが実現すれば、サンプル輸送の負担を軽減し、COVID-19診断を消費者が直接実施することも可能となり、遠隔地や資源の乏しい環境で大規模な集団検査を行うことが可能となります。
この最新の研究成果の一部は、国際的な科学誌(Scientific Reports)において、京都大学(保川清教授)、大阪母子医療センター(柳原格部長)、関西学院大学(藤原伸介教授)、東北大学(児玉栄一教授)、JAIST(ビヤニ特任教授、高木昌宏教授、高村禅教授)の研究者チームと共同で行った研究成果として紹介されています。
図:SARS-CoV-2ウイルスを、直接その場で検査する新規な方法(RICCA)(A)とそれによる熱不活化SARS-CoV-2ウイルスの検出結果(A')。 閉鎖的なサンプル保持容器(B)とそれを用いた、10%ヒト唾液中での熱不活性化SARS-CoV-2ウイルスの検出例 (B')。
【謝辞】
本研究成果の一部は、AMED(日本医療研究開発機構)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 JP20fk0108143、AMEDウイルス等感染症対策技術開発事業 JP20he0622020、JST(科学技術振興機構) 研究成果展開事業研究成果最適展開支援プログラム A-STEP 産学共同 (育成型)JPMJTR20UU の支援を受けたものです。
【参考文献】
論文名 | Development of robust isothermal RNA amplification assay for lab-free testing of RNA viruses |
雑誌名 | Scientific Reports |
著者名 | Radhika Biyani, Kirti Sharma, Kenji Kojima, Madhu Biyani, Vishnu Sharma, Tarun Kumawat, Kevin Maafu Juma, Itaru Yanagihara, Shinsuke Fujiwara, Eiichi Kodama, Yuzuru Takamura, Masahiro Takagi, Kiyoshi Yasukawa and Manish Biyani |
掲載日 | 2021年8月6日 |
DOI | https://doi.org/10.1038/s41598-021-95411-x |
令和3年9月8日
出典:JAIST プレスリリース https://txj.mg-nb.com/whatsnew/press/2021/09/08-1.htmlメムキャパシタと自律局所学習を用いるニューロモーフィックシステムを開発
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学校法人 龍谷大学 国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 |
メムキャパシタと自律局所学習を用いるニューロモーフィックシステムを開発
超コンパクト・低電力消費の人工知能への応用を期待
ポイント
- メムキャパシタと自律局所学習を用いるニューロモーフィックシステムを開発した。従来の人工知能と比べると、劇的なコンパクト化・低電力消費が期待できる。
- メムキャパシタとして、強誘電体キャパシタを用いることで、構造を単純なものとし、薄膜の液相プロセスを用いることで、作製プロセスも単純なものとしており、将来の高集積化が容易となる。DC電流が無く、過渡電流も減り、電力消費が大幅に減る。
- 自律局所学習として、メムキャパシタのヒステリシス特性を上手く利用することにより、結合強度の制御回路など無しに、ニューロモーフィックシステムに学習させることができ、やはり将来の高集積化が容易となる。
- 研究の成果は、「IEEE Transactions on Neural Networks and Learning Systems」(Impact Factor=10.451)に掲載。
【概要】
龍谷大学 先端理工学部電子情報通信課程の木村睦研究室は、奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 中島 康彦教授、北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 徳光 永輔教授(応用物理学領域)らと共同で、メムキャパシタと自律局所学習を用いるニューロモーフィックシステムを開発しました。 メムキャパシタは、印加電圧の履歴によりキャパシタンスが変化する回路素子で、本研究では、強誘電体キャパシタを用いることで、構造を単純なものとし、Bi3.25La0.75Ti3O12 (BLT)の薄膜の液相プロセスを用いることで、作製プロセスも単純なものとしており、将来の高集積化が容易となります。従来の大規模な模倣回路やメモリスタ(可変抵抗素子)の代わりに、メムキャパシタ(可変容量素子)を用いるため、DC電流が無く、過渡電流も減り、電力消費が大幅に減ります。 また、自律局所学習は、単一素子が自分自身の駆動条件のみで特性を変化させる学習方式であり、やはり将来の高集積化が容易となります。従来のシナプス素子の結合強度の制御回路など無しに、メムキャパシタの電圧履歴のキャパシタンス特性を上手く利用することにより、メムキャパシタだけで、ニューロモーフィックシステムに学習させることができます。 従来の人工知能と比べると、劇的なコンパクト化・低電力消費が期待できます。 |
【研究の背景】
「人工知能」は、現在、さまざまな用途に用いられ、将来、SDGs・Society 5.0・IoTといった未来社会に不可欠な情報インフラです。人工知能のための代表的な技術が、生物の脳の機能を模倣することで、自己組織化・自己学習・並列分散処理・障害耐性などの特長をもつ「ニューラルネットワーク」です。しかしながら、従来のものは、ハイスペックなハードウェアで実行される複雑・長大なソフトウェアで、人工知能のために最適化されておらず、コンピュータのサイズは巨大で、電力消費は膨大であり、また、並列分散処理・障害耐性などの特長は限定的でした。ニューラルネットワークを基本的なハードウェアのレベルから生体の脳の構造で模倣し、ニューロン素子やシナプス素子を実装するのが、「ニューロモーフィックシステム」です。しかしながら、従来のものは、人工知能としての最適化が不十分で、上記の特長は完全には得られていませんでした。この原因は、(1) 大規模な模倣回路やメモリスタ(可変抵抗素子)を使うため、DC電流・過渡電流が大きく、電力消費が大きい (2) 大規模なシナプス素子の結合強度の制御回路を使うため、サイズが大きいということによります。
【研究の目的】
そこで、本研究では、ニューロモーフィックシステムにおいて、(1) 模倣回路やメモリスタ(可変抵抗素子)の代わりに、メムキャパシタ(可変容量素子)を用いるため、DC電流が無く、過渡電流も減り、電力消費が大幅に減る (2) シナプス素子の結合強度の制御回路の代わりに、自律局所学習を用いるため、サイズが小さいということを目的とします。
【メムキャパシタ】
メムキャパシタは、印加電圧の履歴によりキャパシタンスが変化する回路素子です。本研究では、強誘電体キャパシタを用いることで、構造を単純なものとし、Bi3.25La0.75Ti3O12(BLT)の薄膜の液相プロセスを用いることで、作製プロセスも単純なものとしており、将来の高集積化が容易となります。ここでは、クロスバー型でメムキャパシタを作製し、印加電圧の履歴により強誘電体キャパシタの自発分極が変化することで、キャパシタンスが変化する回路素子を実現しています。
メムキャパシタ
【自律局所学習】
自律局所学習は、単一素子が自分自身の駆動条件のみで特性を変化させる学習方式であり、やはり将来の高集積化が容易となります。メムキャパシタの電圧履歴のキャパシタンス特性を上手く利用することにより、シナプス素子の結合強度の制御回路など無しに、メムキャパシタだけで、ニューロモーフィックシステムに学習させることができます。学習フェーズでは、シンプルに、クロスバー型の横電極と縦電極に電圧を印加するだけで、必要なキャパシタンスの変化が誘起されます。推論フェーズでも、シンプルに、横電極に電圧印加し、縦電極の電圧を読み取るだけです。
自律局所学習
【ニューロモーフィックシステム】
メムキャパシタと自律局所学習を用いるニューロモーフィックシステムを、実際に組み立てました。アルファベットの「T」と「L」を記憶させ、わずかに異なるパターンを入力するとき、記憶した「T」または「L」のより近いほうが出力されることを確認しました。この動作は「連想記憶」というもので、文字認識や画像認識に直接に応用できるものであると同時に、問題設定により、さまざまな人工知能の取り扱う課題に応用できるものです。
ニューロモーフィックシステム
連想記憶の実験結果
【研究の意義と今後の展開】
従来の人工知能では、たとえば、いま最も有名なコグニティブシステムは、サイズは冷蔵庫10台ほど、電力消費は数百kWと言われています。本研究の基本的な成果をもとに、同様の機能のシステムを構築することを想定すると、サイズはLSI 1チップ、電力消費は20W程度と、劇的なコンパクト化・低電力消費が期待できます。SDGs・Society 5.0において、世界的なエネルギ危機を回避し、IoTにおいて、各々の機器へ搭載することが可能となります。なお、先行研究として、メモリスタと外部学習を用いるニューロモーフィックシステム(M. Prezioso, Nature, 521, 61, 2015)と比較すると、本研究で同様の機能が、低電力消費のメムキャパシタと、外部学習なしの局所自律学習で、実現できています。
【論文情報】
論文名 | Neuromorphic System using Memcapacitors and Autonomous Local Learning (メムキャパシタと自律局所学習を用いるニューロモーフィックシステム) |
掲載誌 | IEEE Transactions on Neural Networks and Learning Systems (TNNLS) |
著者 | 木村 睦(龍谷大学・奈良先端科学技術大学院大学)、石崎 勇真、宮部 雄太、吉田 誉、 小川 功人、横山 朋陽(龍谷大学)、羽賀 健一、徳光 永輔(北陸先端科学技術大学院大学)、 中島 康彦(奈良先端科学技術大学院大学) |
DOI | 10.1109/TNNLS.2021.3106566 |
掲載日 | 2021年9月1日にオンライン版に掲載 |
令和3年9月3日
出典:JAIST プレスリリース https://txj.mg-nb.com/whatsnew/press/2021/09/03-1.html物質化学領域の木田助教の研究課題が服部報公会の研究助成に採択
公益財団法人 服部報公会の研究助成「工学研究奨励援助金」に物質化学領域の木田 拓充助教の研究課題が採択されました。
服部報公会では、工学に関する研究を奨励援助し、もって学術及び科学技術の振興と進歩発展に寄与することを目的とした事業が行われています。工学研究奨励援助金は、工学の発展に寄与する基礎的研究で、単なる調査ではなく理論的あるいは実験的研究を行い、1年間に一応の進展が期待される研究に贈呈されます。
*詳しくは、服部報公会ホームページをご覧ください。
■研究者名
物質化学領域 木田 拓充助教
■採択期間
令和3年10月~令和4年9月
■研究課題名
構造不均一性の導入による高強度・高延伸性熱可塑性エラストマーの開発
■研究概要
熱可塑性エラストマーは、結晶化して架橋構造として振る舞うハードセグメントと、柔軟で屈曲性に優れたソフトセグメントで構成された高分子材料であり、各セグメントの長さや分率を調製することで材料の性質を柔軟的なものから剛直的なものまで幅広く制御することが可能です。従来の研究では、熱可塑性エラストマーは精密合成法で合成されることが多く、各セグメントの長さや分率、分布が高度に制御された、均一な構造を有する熱可塑性エラストマーが開発されてきました。本研究では、異なる構造状態を有する熱可塑性エラストマーをブレンドすることで、わざと構造状態に不均一性を導入します。我々の有する世界最先端の構造解析技術と物性評価技術を駆使することで、物性向上のための最適な不均一構造の導入法を突き止め、従来の熱可塑性エラストマーと比べて劇的に物性を改善することを目指します。
令和3年8月30日
出典:JAIST お知らせ https://txj.mg-nb.com/whatsnew/info/2021/08/30-3.html生命機能工学領域の高木研究室の論文がLangmuir誌の表紙に採択
生命機能工学領域のGuo, Jingyuさん(博士後期課程3年)、下川 直史講師、高木 昌宏教授らの論文が米国化学会(ACS)刊行のLangmuir誌の表紙に採択されました。
■掲載誌
Langmuir 2021, 37, 32, 9683-9693
掲載日2021年7月21日
■著者
Jingyu Guo, Hiroaki Ito, Yuji Higuchi, Klemen Bohinc, Naofumi Shimokawa*, Masahiro Takagi
■論文タイトル
Three-Phase Coexistence in Binary Charged Lipid Membranes in a Hypotonic Solution
■論文概要
電気的に中性なリン脂質DPPCと負電荷を有したリン脂質DOPSから成る脂質二重膜での相分離現象を低張液中で観察しました。脂質膜が二成分から構成されているにも関わらず、三相に分離する条件があることを見出しました。通常、相分離は脂質疎水基間の相互作用で起こると考えられてきましたが、この三相分離構造はDOPSの電離状態に依存して形成されていることを示しました。また、三相分離構造の安定性を粗視化分子動力学シミュレーションによっても明らかにしました。
論文詳細:https://doi.org/10.1021/acs.langmuir.1c00967
表紙詳細:https://pubs.acs.org/toc/langd5/37/32
令和3年8月30日
出典:JAIST お知らせ https://txj.mg-nb.com/whatsnew/info/2021/08/30-2.html学生のHASANさんの論文が、Altmetricによるスコアで上位5%に入る最も議論された論文の1つとして認定

学生のHASAN, Md. Mahmudulさん(博士後期課程3年、物質化学領域、長尾研究室)による、John Wiley & Sons社刊行のChemistrySelect誌に掲載された論文 "Christmas-Tree-Shaped Palladium Nanostructures Decorated on Glassy Carbon Electrode for Ascorbic Acid Oxidation in Alkaline Condition" が、Altmetricによるスコアで上位5%に入る最も議論された論文の1つとして雑誌編集部から認定されました。
■認定年月日
令和3年7月13日
■論文タイトル
Christmas‐Tree‐Shaped Palladium Nanostructures Decorated on Glassy Carbon Electrode for Ascorbic Acid Oxidation in Alkaline Condition
■研究者、著者
Md. Mahmudul Hasan, Yuki Nagao
■対象となった研究の内容
Christmas-tree-shaped Pd nanostructures were synthesized using a simple one-step electrodeposition method with no additives on a glassy carbon electrode (GCE) surface. Growth of the hierarchical nanostructures was optimized through the applied potential, deposition time, and precursor concentration. Comprehensive characterization techniques such as scanning electron microscopy (SEM), energy-dispersive X-ray spectroscopy (EDX), X-ray photoelectron spectroscopy (XPS), X-ray powder diffraction (XRD), and cyclic voltammetry (CV) were used to characterize structural features of the Christmas-tree-shaped Pd nanostructures. Our Christmas-tree-shaped Pd nanostructures showed excellent catalytic activity for ascorbic acid (AA) electro-oxidation in the alkaline condition. The modified electrode exhibited current density of 4.5 mA cm-2: much higher than that of unmodified GCE (0.6 mA cm-2). This simple electrodeposition technique with well-defined hierarchical Pd nanostructures is expected to offer new perspectives using Pd-based nanostructured surfaces in different research areas.
■認定にあたって一言
We are pleased to receive the award for one of the most-discussed articles in "ChemistrySelect". First and foremost, I want to thank Associate Professor Yuki Nagao for his valuable comments, guidelines, and advice. I am also grateful for the support of Nagao LAB members. Our study will hopefully aid in the development of hierarchical metal catalysts for electrocatalysis and energy conversion applications.


令和3年8月20日
出典:JAIST 受賞https://txj.mg-nb.com/whatsnew/award/2021/08/20-1.html触媒遺伝子「触媒シークエンシング」を発見 ~触媒インフォマティクスを駆使した新しい触媒開発に成功~
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国立大学法人 北海道大学 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 国立研究開発法人 科学技術振興機構 |
触媒遺伝子「触媒シークエンシング」を発見
~触媒インフォマティクスを駆使した新しい触媒開発に成功~
ポイント
- 触媒遺伝子「触媒シークエンシング」を触媒ビッグデータから発見。
- 触媒組成を従来の周期表の元素記号ではなく、ゲノム配列のように記号で表現。
- 触媒遺伝子を用いた触媒設計を提案し、実験実証に成功。
【概要】
北海道大学大学院理学研究院の髙橋 啓介准教授、髙橋 ローレン学術研究員、藤間 淳特任准教授、宮里 一旗特任助教らの研究グループは、北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科物質化学領域の谷池 俊明教授らと共同で、触媒遺伝子「触媒シークエンシング」を触媒ビッグデータから発見しました。 これまで触媒組成は周期表の元素記号で表現されてきましたが、反応場での真の触媒の状態は複雑なため、触媒組成を記述する真の触媒記述子*1の決定が困難を極めています。そのため機械学習などを用いる触媒インフォマティクス*2において、触媒物性を記述する上で情報的制約がありました。 そこで本研究では、独自に開発したハイスループット実験装置で得られたメタン酸化カップリング反応の触媒ビッグデータに対して、触媒インフォマティクス・信号処理*3・パターン認識*4・自然言語処理*5を駆使し、新たな触媒の記述方法である「触媒の遺伝子」を定義し提案しました。この「触媒の遺伝子」を用いることで、触媒組成の情報を、生物の塩基配列のように記号で表現することが可能となります。この触媒特有の配列を「触媒シークエンシング」と名付けました。この「触媒シークエンシング」を用いると、従来の元素記号での表記では全く異なる触媒組成であっても、同じ機能を持つ触媒は同じ「触媒の遺伝子」として表現することが可能となります。触媒組成は周期表の元素記号で表現されるのが一般的でしたが、本研究により提案された「触媒遺伝子」により、今後触媒は「触媒シークエンシング」で記述することが可能となります。 この「触媒遺伝子」の有効性を確認するため、同じ「触媒遺伝子」を持つ触媒群の元素を再編成することにより、同じ触媒遺伝子を持つ触媒の設計を行い、実験実証にも成功しました。結果、高いC2収率を達成する新規触媒が発見でき、「触媒遺伝子」が触媒設計に大変有用であることが証明されました。また発見された触媒が既知の触媒と似た遺伝子を持っているのか、もしくは全く新種の触媒遺伝子なのかなど、バイオインフォマティクスで見られる遺伝子解析のような、全く新しい視点での触媒情報の解析が可能となり、より発展的かつ実用的な適用が期待できます。 本研究成果は、米国東部時間2021年7月30日(金)午前6時公開のThe Journal of Physical Chemistry Letters誌にてオンライン版が掲載されました。 |
【背景】
マテリアルズインフォマティクス・触媒インフォマティクスの登場により材料・触媒科学は大きな転換期を迎えています。マテリアルズインフォマティクス・触媒インフォマティクスでは、第4の科学であるデータ科学を用い、材料・触媒データのパターンから材料・触媒設計を行います。そのような中、触媒組成は周期表の元素記号で表現されてきましたが、反応場での真の触媒の状態は複雑なため、触媒組成を記述する真の触媒記述子の決定が困難を極めています。そのため機械学習などの触媒インフォマティクスにおいて、触媒組成の記述方法が大きな障壁となっています。周期表の元素記号に頼らず、触媒の特徴を反映した触媒組成の記述方法を決定する必要があります。
【研究手法】
独自開発したハイスループット実験装置で得られたメタン酸化カップリング反応の触媒ビッグデータを用い、触媒インフォマティクス・信号処理・パターン認識・自然言語処理を駆使し、触媒ビッグデータに隠されているパターンから「触媒の遺伝子」を提案しました。
【研究成果】
発見された「触媒の遺伝子」は生物の塩基配列のように記号で表現することができます。この触媒特有の配列を「触媒シークエンシング」と名付けました(図1)。この「触媒シークエンシング」を用いると、従来の元素記号での表記では全く異なる触媒組成であっても、同じ機能を持つ触媒は同じ「触媒の遺伝子」として表現することが可能となります。「触媒遺伝子」を持つ触媒群の元素を再編成することにより、同じ触媒遺伝子を持つ触媒の設計を行い、実験実証にも成功しました。
【今後への期待】
今回提案した「触媒遺伝子」は、様々な触媒データに適用することにより、発見された触媒が既知の触媒と似た遺伝子を持っているのか、もしくは全く新種の触媒遺伝子なのかなど、バイオインフォマティクスで見られる遺伝子解析のような、全く新しい視点での触媒情報の解析が可能となります。したがって、触媒インフォマティクスにおける触媒データの取り扱い手法の基盤技術として、より発展的かつ実用的な適用が期待できます。
【謝辞】
なお、本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術」(研究総括:上田 渉)における「実験・計算・データ科学の統合によるメタン変換触媒の探索・発見と反応機構の解明・制御」(研究代表者:髙橋 啓介)の支援を受けて行われました。
【参考図】
図1 発見された触媒遺伝子-触媒シークエンシング
【論文情報】
論文名 | Catalysis Gene Expression Profiling: Sequencing and Designing Catalysts(触媒遺伝子発現プロファイリング:触媒シークエンシングと設計) |
著者名 | 髙橋 啓介1 、藤間 淳1、宮里 一旗1、中野渡 淳2、藤原 綾2、Thanh Nhat Nguyen2、谷池 俊明2、 髙橋 ローレン1(1北海道大学大学院理学研究院、2北陸先端科学技術大学院大学) |
雑誌名 | The Journal of Physical Chemistry Letters(物理化学の専門誌) |
DOI | 10.1021/acs.jpclett.1c02111 |
公表日 | 日本時間2021年7月30日(金)午後8時(米国東部時間2021年7月30日(金)午前6時)(オンライン公開) |
【用語解説】
*1 触媒記述子...触媒の特徴を数値化して表現したもの。
*2 触媒インフォマティクス...データ科学手法を用いて触媒設計・触媒解析を行う学問。
*3 信号処理...信号を数理処理によって解析・処理する技術。
*4 パターン認識...データの中から規則性を取り出す技術。
*5 自然言語処理...言語や記号をコンピューターで処理する技術。
令和3年8月2日
出典:JAIST プレスリリース https://txj.mg-nb.com/whatsnew/press/2021/08/02-1.html