SAWF (stochastic attempts with failure) 分布は、共同研究者とともに、化石生痕の頻度分布を解析するために考案した確率分布関数です。
あまり良いたとえではないかもしれませんが、A島には刺すけれども毒のないハチが住んでいて、島の住民は生涯においてこのハチに平均で8回刺されてしまうとしましょう。これは平均ですから、10回刺されてしまう人も、0回の運が良い人もいるでしょう。回数の分布がポアソン分布で表されることは良く知られていますね。ところがもしも、猛毒のハチだとしたら、どうでしょう? 1回刺さされることは致命的ですから、生涯において2回刺されるということは起こり得ませんね。
ハチはこの中間的な強さの毒を持つとします。住民が平均して2回刺されてしまうB島と、3回刺されてしまうC島があったとします。(もちろん、アレルギー反応とはは考えません)。B島に比べてて、C島のほうがハチが多いのかもしれませんし、あるいは、1回刺されたときの危険度が低いのかもしれません。このように、ハチが人の生存に及ぼす影響は、BとCとで、結局どちらがどれだけ高いのか、平均値だけからでは明確ではありません。SAWFはこのような状況における回数分布を記述します。
xが試行回数;rは本来のライフタイムに生じる平均試行回数、vは試行あたりの人の脆弱性を表し、完全に無毒の時は0です。小文字と大文字のガンマは、不完全および完全ガンマ関数です。
分布を図示すると、このようになります。縦軸の確率はログスケールす。
貝類化石では、捕食者からの圧力(捕食圧)が化石に記録されているものがあり、このような確立モデルと照らし合わせることにより、種間相互作用における捕食圧を定量することに成功しています。